植物由来高分子「リグニン」充填による軽量複合材料の高強度化
軽量化のために使用されているプラスチックには、製造に伴う石油由来原料使用およびCO2排出という環境問題があるため、一部的に天然原料で置き換えたいと考えている研究者が多いですが、今までは機械的特性が低下しました。今回、森林総研が開発した改質リグニンを用いたポリプロピレン(PP)系複合材料をNIMSオリジナル混錬工程により創製し、今までなかった物性改善を示しました。リグニンが繊維/樹脂の界面を強靱化させることが物性改善の原因であることを明らかにしました。この混合物は自動車用部品などへの適用性を有することを示しました。リグニンの添加に応じてPPおよび炭素繊維の必要な量が減るため、複合材料1kgあたりのCO2排出量が30%以上削減できます。これによってカーボンニュートラルの実現に貢献します。

タンクスさんへQ&A
Q:リグニンバイオマスとは?
A:木質はセルロース(50%)、ヘミセルロース(20%)およびリグニン(30%)で出来ています。リグニンは水酸基とベンゼン環をたくさん持っている剛直な分子ですが、廃棄物とされることが多いため、付加価値化が必要です。森林総研においてグリコールで修飾したもの「改質リグニン」が開発されて、無水酸変性プラスチックとの親和性が高くて複合材の成形に向いています。
Q:リグニンの強化効果を調べるにはどのような実験を行うのですか?
A:引張試験は材料組成をバルクで比較する一般的な方法ですが、特定の強化効果は解明できません。動的粘弾性解析(DMA)では高分子鎖の局所的な動きがわかり、ナノインデンテーションではリグニンが繊維近傍におけるPPの剛性への影響がわかります。 このようなマルチスケール解析で、構造材料に向けたバイオマス系複合材料の高性能化に役立ちます。
Q:この材料は、どのような物に実用化させるのに向いていますか?
A:この混合物は、自動車や飛行機などの構造体の軽量複合材に向いています。特に、繊維強化PPはバンパーやインテリアに使うことを予想しています。また、家庭用品や包装材にも使用できます。優れた物性と成形性の組み合わせにより、社会のさまざまなニーズに応えるような汎用性の高い材料です。
Q:タンクスさんの性格と研究内容はどうマッチしているように思われますか?
A:合成原料の使用により複合材料の特性は調整しやすい一方、限られたパターンの成分・構造になっている天然原料から構造材料を創るのは困難です。僕は、頑固者で厳しい制約のある課題の解決策を見つけるのが好きなので、型破りな発想と様々な技術の応用を必要とする研究テーマは、自分の性格に合っている気がします。
