研究成果

2022年度TOP成果

Ni基合金の組成-プロセス-組織-特性予測システム構築
~バーチャル熱処理で材料設計を高速化!~

長田 俊郎
構造材料研究センター 材料創製分野
高信頼性超耐熱材料グループ グループリーダー
長田おさだ 俊郎としお

NIMS-MaDISが開発中のマテリアルズインテグレーションシステム(Mint)内に、Ni基合金に対応した特性予測(NIMS)、組織予測(名大)およびイメージ解析(NIMS)モジュールを搭載・統合することで、組成-プロセス-組織-特性の一連の予測に成功しました。本システムの特徴は、ベンチマークシステムである米国MGIや英国JMatPro等に対し、非平衡計算時の特性予測が可能であることであり、仮想熱処理実験が可能です。これにより、実験に比べ100倍以上高速でプロセス条件の最適化が可能になります。また、別途開発中のNi基超合金特性プログラムと連携することで、最新Ni基超合金にも対応可能であり、ユーザー企業における新規超合金の社会実装に貢献する成果です。
SAMURAI 
Mint情報

独自の3D観察技術によりミクロな疲労亀裂の成長メカニズムを解明

 

長田さんへQ&A

Q:Ni基合金って何?どこに使われるのですか?
A:Ni基超合金は10種類以上の元素を混ぜ合わせた合金です。大気中で温度と応力が非常に高い非常に過酷な極限環境で使用することができる優れものです。現在、ジェットエンジンや発電用ガスタービン、更にはロケット等の部品として使用され、社会を支えています。これからは水素タービン中で活躍予定です!

Q:予測システムはどのようにして作るんですか??
A:今回私は複雑な組織から強度を高速で予測するプログラムを開発しました。それには実際の産業現場で起こっている現象を自分の目で見て、想像することが大切です。そこで感じた現象をモデル化すると案外簡単に予測できるものかもしれません。予測システムでバーチャルテストするためには、NIMSが長年蓄積してきた実験データがとても重要になります。

Q:予測システムはどうして必要なの?
A:強い合金を作るためには、元素の組み合わせだけでなく、熱処理によって組織を作りこむことが重要です。熱処理条件は無数に存在するので、予備実験をするのがとても大変です。予測システムを使って、事前にバーチャル空間で実験ができれば、開発スピードを一気に加速できるはずです。

Q:この研究で一番楽しかったことは??
A:私が作ったのは強度予測プログラムだけです。それをMintというNIMSが開発するマテリアルズ・インテグレーションシステムに実装して、初めてプロセス-組織-特性の予測が可能になります。システムの専門家、画像処理の専門家、組織予測の専門家のみなさんと同じ目標をもって違う視点で一緒に議論できたことが、この研究で一番楽しかったことでした。

 

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