研究成果

2023年度TOP成果

放射光でセラミックス内部の欠陥観察に成功
―部材の信頼性向上、プロセス体系を革新― 

大熊 学
構造材料研究センター 材料創製分野
セラミックス基複合材料グループ 主任研究員
大熊 学おおくま がく

セラミックス分野は部材産業であり、成形した粉体を加熱して複雑形状部品を製造する焼結はその根幹となる技術です。

放射光X線マルチスケールCTを用いた3D非破壊観察により、光学的な計測やSEMに基づく2D断面観察では分からなかったセラミックス内部の有害な欠陥の形状、寸法、空間分布を把握し、粉体プロセスと焼結における不均質構造および欠陥の形成過程を解明しました。粉体成形で生じる内部欠陥を制御し、実用的なセラミックス部材の信頼性や寿命を向上するプロセス技術の開発に役立ちます。さらに、成形体密度が不均一な複雑形状部品の局所的強度の推定も可能になります。
SAMURAI 

放射光でセラミックス内部の欠陥観察に成功

 

大熊さんへQ&A

Q:セラミックスってどうやって作るの
A:セラミックスは、原料となる粉末を高温で焼き固めて作られます。まず、細かく砕いた鉱物や化学的に作られた粉末を水や添加剤と混ぜて形を整えます(粉体プロセス)。その後、この成形された物体を、通常1000℃以上の高温で焼きます(焼結)。焼結中に、原料の粒子が互いに結合し、硬くて耐久性のあるセラミックスが形成されます。

Q:なぜ、3D非破壊技術を使ってセラミックス内部の欠陥観察を?
A:セラミックスは製造過程で小さな欠陥が生じることがあり、これが製品の強度信頼性に大きな影響を与えます。3D非破壊技術を使うことで、セラミックス内部の欠陥を観察し、どこに問題があるかを詳しく知ることができます。この情報を基に製造プロセスを改良し、より強く信頼性の高いセラミックスを作ることができると考えました。

Q:この成果は将来的にどのような構造材料へ実用化させたいですか?
A:これまでは代表的なセラミックスであるアルミナ(Al2O3)のモデル実験で成果を挙げてきましたが、将来的に、航空機や自動車のエンジン部品、固体酸化物形燃料電池や低温同時焼成セラミックスなどの積層材料、医療用の構造材料など、高い強度と耐久性が求められる広範な分野へ展開していきたいです。

Q:大熊さんの性格と研究内容はどうマッチしているように思われますか?
A:僕は本質的に素直で柔軟な性格であり、複数の専門家とのネットワークを活用することで、様々な視点から材料の特性やプロセスを深く理解することができました。このアプローチは、共同研究や新奇材料の解析において大きな強みとなっています。例えば、積層セラミックコンデンサーの電極解析といった複雑な問題にも、柔軟かつ多角的な視点で取り組むことができました。

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