研究成果

2023年度TOP成果

高圧・低温水素ガス中における水素脆化挙動の評価技術開発

和田健太郎
構造材料研究センター 材料評価分野
極低温疲労グループ 主任研究員
和田 健太郎わだ けんたろう

液化水素利用の実用条件で想定される低温・高圧水素環境下において、純ニッケルの水素脆化挙動に及ぼす温度・ひずみ速度の影響を解明しました。これは、NIMSオリジナルである中空試験片の内側に水素を高圧充填する試験法をさらに改良することにより実現しています。今回改良に成功したこの試験技術を活用し、中空試験片方式でしか実現できない極低温(−233℃)・超高圧(100 MPa超)の水素環境中での材料試験を進めています。これにより、液化水素関連機器の安全に貢献するとともに、極低温環境特有の水素脆化メカニズム解明を目指します。

SAMURAI 

高圧・低温水素ガス中における水素脆化挙動の評価技術開発

 

和田さんへQ&A

Q:耐熱のイメージがあるニッケルをなぜ低温下で、試験をするのですか?
A:所属グループにて過去に行われた研究から、「耐熱性に優れた材料は低温環境でも良い特性を示す傾向にある」ことが分かっています。この経験を元に、本当にこの材料が低温で使えるのか、また、水素環境ではどのようは特性を示すのかの調査を進めているところです。

Q:従来技術ではグラフの青条件下での試験に限られていたのはなぜですか?
A:従来技術では、試験環境を作るために圧力容器を用いていました。低温で試験するためには、試験対象を圧力容器ごと冷やす必要があるのですが、この圧力容器がとにかく大きいため冷やせる温度に限界がありました。そこで、圧力容器を使わずに試験ができる中空試験片方式に着目し、冷却対象物の大きさを絞ることで、極低温・高圧水素環境での試験を実現しています。

Q:今の課題とそれを克服する難しさはどこにありますか?
A:他の金属にない優れた特性を有するニッケル合金を水素環境で使用したいというニーズがあります。しかし、大半のニッケル合金は水素に弱いことが知られています。このようなニッケル合金を水素環境で使おうとすると、「どうしてニッケルが水素に弱いのか」、「水素に強くするためにはどうすれば良いのか」を解明する必要があります。特に後者については確立された手法がある訳ではないため、手探りで進めなくてはならない難しさがあります。

Q:和田さんの性格と研究内容はどうマッチしているように思われますか?
A:昔から工作が好きで、世の中にないものを作りたいという思いがありました。そういう点では新しい試験技術の開発は私に向いているのかもしれません。今のところ先輩が確立した中空試験片方式の改良により新たな試験を実現している状況ですが、いつか完全オリジナルの試験・評価手法により、誰も観たことがない現象を解明したいと思っています。

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