2025年1月10日NIMSにて、若井 栄一 先生 (ミシガン州立大学)によるご講演がICYS・RCSM共催 特別セミナーとして開催されました。
日時:2025年1月10日(金曜日)13:30~14:30
場所:NIMS 千現地区 先進構造材料研究棟5階カンファレンスルーム
講演題目:材料照射損傷研究と原子力・加速器応用のための関連開発
講演者:若井 栄一 先生 (ミシガン州立大学)
開催者:土谷浩一(微細組織解析グループ)
講演後の集合写真
若井 栄一 先生(前列左から7人目)
材料照射損傷研究と原子力・加速器応用のための関連開発
若井 栄一(ミシガン州立大学)
概要:
講演者は、これまで日本原子力研究開発機構においては、核融合炉、高速炉、軽水炉材料に関わる材料照射損傷の研究、さらには、核融合用材料照射用中性子源の研究開発を行ってきた。また、様々な物質の解析を行うJ-PARCセンターでは、水銀ターゲット型の核破砕中性子源施設でビームのパワーアップのために、課題となっていた水銀ターゲットを包む容器が高熱負荷等に耐えるための健全性評価と改良を実施するとともに、ニュートリノ施設で使用されるチタン合金製の機器の耐久性評価等も協力してきた。他方、分野の貢献では、日本原子力学会材料部会で、分野のロードマップを2021年5月に完成させた。また、原子力材料に関する国際誌の1つである、Journal of Nuclear Materials の編集者の1人として、現在も分野に貢献をしている。今年の6月からは、米国のミシガン州立大学にて、原子核物理学(米国でトップ機関)とアイソトープ製造(研究と応用)を行うFRIB(Facility for Rare Isotope)に従事しているが、これまでに人類が経験したことがない厳しい照射環境で使用される機器が多数あり、材料選定、機器の寿命評価、及びシステムの研究開発等を行っている(それぞれの用途や使用環境に合わせてAl合金、Cu合金、Ti合金、グラファイト、インコネル、Li等のような材料が多岐に渡っている)。
本講演では、先進原子炉システムや核融合炉、及び高エネルギー加速器施設等の研究開発のために、これまでに行ってきた高エネルギー粒子線を受ける環境下で使用される材料照射損傷やその基礎過程をご紹介します。さらに厳しい照射環境下でも使用できるような先進材料の研究開発を最近実施し、この研究では、複数のハイエントロピー合金(HEA)の作製とその特性評価を実施し、NIMS の技術者の皆様や優れた施設利用のご協力を頂いて評価したTi系HEAの高温強度特性では、大変興味深い特性を持つことが分ってきました。また、NIMS の技術者のご協力や設備利用にて実施したチタン合金の照射損傷や超硬度なW系HEAの解析例も併せて紹介します。さらに、このような研究と開発に関わる国研、大学、産業界との連携の課題等も併せて、ご紹介する予定です。
References: 1) E. Wakai, et al., J. Nucl. Mater. 543(2021)152503. 2) E. Wakai, et al., Mater. Characterization, 211(2024)113811. 3) T. Ishida, S. Kano, E. Wakai, et al., J. Alloy and Compounds, 995(2024)174701.