研究成果

2022年度TOP成果

独自の3D観察技術によりミクロな疲労亀裂の成長メカニズムを解明

西川 嗣彬
構造材料研究センター 材料評価分野
疲労特性グループ 主幹研究員
西川にしかわ 嗣彬ひであき

ミクロな亀裂の発生と成長によって起こる疲労破壊において,発生初期の亀裂は,材料のミクロ組織の影響を受け複雑に振舞うことが知られており,寿命予測等で最重要であるが,その成長メカニズムは長年の未解決課題であった。今回,NIMSのノウハウを最大限に活かした高精細な3D解析によって,ミクロな疲労亀裂の結晶学的な成長経路を世界で初めて定量的に示すことに成功した。その結果、亀裂は材料の滑り面である{111}面に沿って成長していることが明らかになった。つまり,ミクロな疲労亀裂では、せん断応力によるき裂成長(モードII)が支配的であることが実験的に証明された。これまで,多くの研究者が亀裂は引張り応力によって成長(モードI)すると考えていた。これは,疲労寿命予測の大前提を見直す必要性を示唆する革新的な結果である。
SAMURAI 関連記事 NIMSメールマガジンより

独自の3D観察技術によりミクロな疲労亀裂の成長メカニズムを解明

 

西川さんへQ&A

Q:金属疲労とは??
A:小さな力が何度も加わることで金属が破断してしまう現象が金属疲労です。力の繰返しは、航空機の離着陸、容器の内圧変化、車軸の回転など様々な場所に潜んでおり、金属疲労が多くの事故をひきおこしてきました。100年以上にわたって研究されてきましたが、まだまだ分からないことが沢山残されています。

Q:金属疲労を調べるには、どのような実験や観察を行うのですか?
A実験装置で金属に繰返し何回も力を加えて、破断までの回数を調べることで、機械を安全に設計するためのデータを取得します。研究では、金属疲労の”種”である小さい亀裂の発生や成長の様子を顕微鏡で観察して、金属のミクロな特徴との関係を調べています。亀裂が数10〜200ミクロン程度(髪の毛の太さが80ミクロン)まで成長すると、あとは一気に亀裂が成長するため、小さい亀裂を調べることが重要です。

Q:この成果のポイントを分かりやすく教えてください?
A:NIMSの観察ノウハウを集約することで、金属疲労で最も重要な200ミクロン程度の亀裂を、世界で初めて高精細に三次元観察することに成功しました。今回、せん断モードで亀裂が成長していることが明らかになりました。これは、疲労寿命予測で長い間使われてきた力学モデルの前提を覆すような驚くべき結果でした。

Q:西川さんの性格と研究内容はどうマッチしているように思われますか?
A:僕は、DIYが大好きで、世の中に売っていないものを自分で作ることに魅力を感じます。この性格は、DIY精神で色々な機器を組み合わせて実験装置を仕立てたり、簡単な部品を設計して装置を改造したりする時に役立っていて、とても楽しく研究に励んでいます。色々な研究スタイルがありますが、無意識に自分の性格にあった研究テーマを選択している気がします。

 
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