研究成果

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高強度鋼の粒界破壊機構をマルチスケール3次元解析で解明

柴田 暁伸

構造材料研究センター 材料評価分野
鉄鋼材料グループ 上席グループリーダー
柴田しばた 暁伸あきのぶ

高強度マルテンサイト鋼・脆性粒界クラック伝播挙動のマルチスケール3次元解析により、粒界クラックは不連続伝播しており、小角粒界セグメントにおいてクラック伝播が停止するといった破壊メカニズムを解明しました。
X線CTおよびFIB-SEMシリアルセクショニング (3D EBSD) を用いたマルチスケール3次元解析という新規な破壊現象解析技術の確立しました。
この研究成果から、脆性破壊を抑制した高強度鋼開発のための材料設計概念を提唱しました。
SAMURAI

高強度鋼の粒界破壊機構をマルチスケール3次元解析で解明

 

柴田さんへQ&A

Q:鉄鋼材料の研究をどうしておこなっているのですか?
A:鉄鋼材料の研究というと、非常に古臭く感じるかもしれませんが、私たちの身の回りには自動車や工具など、鉄鋼材料が満ち溢れています。革新的な新しい鉄鋼材料の開発は、安心・安全なインフラの構築など、私たちの生活を快適にすることができるため、鉄鋼材料の研究をしています。

Q:この研究は実際の生活にどうつながるのですか?
A:これまで使用されてきた材料よりも強度が2倍の材料を開発することができれば、使用する材料は半分で済みますので、省エネルギー対策や脱炭素社会実現のためには、高強度な鉄鋼材料を開発する必要があります。ですが、鉄鋼材料を高強度化すると、脆性的に破壊してしまうという問題が生じます。この研究は脆性破壊を抑制することを目標として、高強度鉄鋼材料の壊れ方を明らかにしたもので、将来的には脆性破壊を抑制する高強度鉄鋼材料の開発,そして衝突しても破壊しない自動車や地震に強い建物の開発に繋がります。

Q:この成果のポイントを教えてください?
A:材料の破壊は複雑ですので、その機構を明らかにするためには3次元的に破壊の仕方を調べる必要があると考えました。この研究では、ナノメートル (10-9m)~ミリメートル(10-3m)にわたるマルチスケールで破壊挙動を3次元解析するという、これまでになかった新しい研究手法によって、高強度鉄鋼材料の破壊機構を明らかにしました。

Q:柴田さんの性格と研究内容はどうマッチしているように思われますか?
A:物事をとことん深く考えることが好きであり、自分の納得がいくまで途中で投げ出さずにやりきる性格です。この研究では、最先端技術によって得られる膨大なデータが指し示すものを昼夜を問わず徹底的に考え、また、共著者の皆さんの多大なサポートの結果、高強度鉄鋼材料の破壊機構を明らかにすることができました。

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