研究成果

2023年度TOP成果

Mg合金のための高耐食性被膜の開発

Top成果HP用写真_廣本
構造材料研究センター 材料創製分野
耐食材料グループ グループリーダー

廣本 祥子ひろもと さちこ

軽くて強いMg合金の耐食性の向上のため、腐食抑制剤としてアルミン酸イオン(AlO2-)を見出し、イオン交換能のある層状複水酸化物(LDH)に担持してから金属表面に電着して高耐食性LDH被膜を作製することに成功しました。LDHに腐食抑制剤を担持後に電着法で成膜する方法、腐食抑制剤にアルミン酸イオンを使用することはNIMSオリジナルです(特許出願中)。Mg合金の高耐食化による利用促進や腐食抑制剤選択の幅の拡大、自己修復被膜や他の金属材料への展開などが期待されます。

SAMURAI 

Mg合金のための高耐食性被膜の開発

 

廣本さんへQ&A

Q:耐食被膜にLDH使うのはなぜですか?
A:LDHは層間に腐食抑制剤として働く陰イオンを入れておき、これを腐食の原因であるCl-イオンや大気からのCO32-イオンと交換で放出できるからです。この作用のため、材料に発生した腐食を小さいうちに修復することができます。LDHは、Mg合金に限らず、Al合金や鉄鋼材料などのための耐食被膜の材料として注目されています。

Q:この被覆方法のポイントは何ですか?
A:様々な金属材料に適用できること、被覆工程にかかる時間を短くできること、そして腐食抑制剤を予めLDHに担持してから被覆するため使用できる腐食抑制剤の種類の制約が小さいことがポイントです。また、従来法のイオン交換工程で懸念される基材の腐食を心配する必要がありません。

Q:この成果は将来的にどのような構造材料へ実用化させたいですか?
A:Mg合金と同様に自動車などの軽量化材料として期待されているAl合金、さらに鉄鋼材料の耐食性被膜として実用化して、材料寿命を延ばしたいと考えています。また、LDHは水溶液中からの様々な陰イオンの除去・回収に用いられています。本成果はLDH粉末のフィルター材料への固定化に応用できます。

Q:廣本さんの性格と研究内容はどうマッチしているように思われますか?
A:課題解決のために、独創的ではあるけれども現実的な方法を提案していきたい、できるだけ普遍性のある技術を開発・提案したいと思って研究を行っています。以前、外国の先生からpragmaticな人だねと言われたことがあります。Mg合金は実用金属材料中で最も耐食性が低いことから、本研究で開発した耐食性被膜のデザインや被覆方法は様々な金属材料に応用できると思います。

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